1人が本棚に入れています
本棚に追加
ひゅ、と、何か風を切る音が聞こえた。
何だと思う間に、手が、紐が、体を掴んで巻き付いて、何がなんだか解らなくなる。
頭の中がつんと冷え、危機という警告に凍りつく。
手足は自由がきかない。目を布で塞がれ、口には何か押し込まれ、手は背中に回ったまま、胴体と一緒に縛られている。両側から抱えられ、拘束から落ちた片足を引きずったまま、運ばれ始める。
頭に血が上って、やみくもに暴れるが、意味が無い。自分を掴む手は、外れるたびに何度も場所を変えるだけだ。周りで何か言っている声もする。
解らない。
わからないけれど、
ふと、慌てている自分を、冷静に見ている自分に気がついた。
どうも何か違う。
人数が多い。
でも力が弱い。
手が小さい。
声が若い。
自分を運んでいる3人と、周りで喋る3・4人。
どれも、大人じゃない。
それが分かると、頭を刺すような緊張が止んだ。
最初のコメントを投稿しよう!