帰り

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  暴れるのをやめて、力を抜く。 諦めたと思われただろうか。急に周りが活気を増す。 焦っていたのは相手も同じらしい。 引きずられる片足はすぐに、土から草を削るようになった。時々固いものにもぶつかる。 そして突然投げ出され、何かに頭をぶつけた。 いや、蹴られたらしい。目の裏で火花が弾けたような感じがする。続けて、足や脇腹を次々と蹴られた。 鼻の奥がきな臭く、ただ痛い。 口に詰められている何かを噛み締める。 痛いのだけれど、何故か可笑しくなってきた。こみあげる笑いを隠す方が大変だ。 何しろ、後が来ない。ここまで縛って転がしたなら、確実に全員で袋だたきだろうに。 冷たい土と草のにおいが、鼻先をくすぐる。
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