帰り

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一瞬、総ての音が途切れ、息をのむ。 自分に、打撃が、無い。 それで、一気に緊張が高まる。 何が起きた。 「何を、しているのかな」 穏やかな声。 聞き慣れた大人のそれに。 ヤバい、と悶絶するほどの危機感に襲われた。 必死でもがき、せめて体を丸めて顔を隠そうと悪あがく。 しかし慌てているから木にぶつかり、転がろうにもうまくいかない。 その間に、周りはそれぞれ悲鳴をあげて逃げて行った。 ばさりと木刀を投げた音がして、草を踏む音が間近で聞こえる。 心臓が暴れ、壊れそうにひきつれる。 ぐいと引き起こされ、顔に手をかけられた。 もう駄目だ。
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