転校生

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四時限目。 数学。 半端なく眠い。 他の教科なら寝ちゃうんだけど、この数学の先生は口うるさいし怖いから、眠たくても我慢する。 それでも、頭にはちっとも入ってないんだ。 特に図形とか無理。面積とかも無理。 公式とかもっと無理。 「ねぇ」 「え」 起きてるの精一杯の私に転校生の熊川くんが声をかけてきた。 「定規忘れた、貸してくんない?」 見ると、彼は筆記用具入れをひっくり返して探していた。 「ど、どうぞ」 と、気軽に貸してはみたものの、すぐに恥ずかしくなった。 なぜなら。 その定規は昔流行ったゲーム、″モンスターの森″のキャラグッズだったから。 私が眠れない夜に数えるアレ。 そんな幼稚な定規を見て、熊川くんは何て思っただろ? 「サンキュー、助かった」 けれど、彼は表情を変えることもなくそれを使い、笑顔で返してきた。 おまけに、 「その定規、欲しい」 この定規をお気に召したみたい。 やっぱり合うのかも。
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