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ーー2026年 9月。
今日から新学期が始まる。
「……ふ……ぁっ」
眠れないのに朝から欠伸だけは出るんだ。
制服を着て下へ降りると、すでに朝食は用意されていて、二才歳上の兄、琢磨は、ほとんど完食していた。
「美海、あんた夏休みの宿題は終わってるの?」
最近いつも不機嫌なお母さんが今さらな事を聞いてきた。
「……おわってるよ」
嘘だ。
本当は終わってない。
まだ数学のプリントが残っている。
「ほんとに?お母さん、美海が勉強してるところ一回も見たことないんだけど」
それは、お母さんの前ではしないからだよ。
「してるよ、自分の部屋で」
「じゃなんで通知表はあんなに悲惨だったのよ?」
あー、もう。
朝ご飯食べながらする話じゃないよね。
「体調悪かったから」
私の事なんてまるで興味ないくせに、成績のことだけは口出すんだ。
「そんな嘘……」「ああー!今、大事なトコだからっ!」
お母さんと私の無意味な会話を止めたのは、ニュースに釘付けの琢磨だった。
「静かにしてよ」
「……」
大事な長男の言うことは、すんなり受け入れるお母さん。
お母さんにとって、頭のいい琢磨は自慢の息子。
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