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私が中学の時から両親のケンカは絶えなかった。
毎日。夜になると、二人の言い争いの声が二階の子供部屋まで聞こえてきてたっけ。
「この間だって夜勤だって嘘ついて飲み歩いてたくせにっ!」
「外で仕事してたら憂さ晴らししたい時があるんだよっ!
特に総合病院で不規則な看護師してたらなっ」
「……たかだか看護師のくせに偉そうな事言わないでよ!」
仕事を理由に殆ど家に居ないお父さん、
そのお父さんが浮気してると疑って止まない、医者の娘であるお母さん。
二人が離婚の話までするようになると、決まって最後は、
「離婚したら子供は渡さないからな」
「私だって琢磨だけは引き取るつもりよ」
「はぁ?!長男は父親が引き取るのが常識だろ?!」
「何の常識よ!実家はあんたが医者になれなかったおかげで病院の跡継ぎ問題が起きてるの!琢磨は絶対に引き取ります」
″琢磨″
″琢磨″
お父さんの口からも、お母さんの口からも、出てくるのは兄の名前ばかり。
二人は、私の名前を忘れてるんじゃないかと思うくらい。
……この頃から、私の不眠症は始まっていた。
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