死別

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 結婚してから短い間だった。それでも俺の中では人生の中で一番幸せだったと誓える。  少し悩んで、俺は義父さんにこう聞いた。  ――――この眼鏡、俺が使ってもいいでしょうか。  ――――……好きにしろ。似合うかどうかは別として、お前が満足するならそれでいい。  ――――ありがとうございます。  そして俺は後日眼鏡屋へ行った。視力が悪くない俺にとってレンズは不要だった。そして微調整のために。  ――――お客さん、これ女性用のフレームだよ?  ――――いいんです。これは世界で一番大事な人の、形見ですから。  ――――……そうかい。大事にしなよ。
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