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第15章 紅葉の宿(つづき)
しかし部屋に戻ると、この甘いムードは一変。
既に並んで延べられた二つの床に、包まれる空気が艶やかさを増す。
だが、続きの間は煌々と灯りが点いており、
一気に艶めかしい空気にもなれず、少しぎこちなくなる。
「お茶、淹れるね」
私は、そんな空気からちょっと逃げるように
手にしているわずかな着替えを置きに、急いで寝室に入った。
ところが、荷物を置いて立ち上がった途端、いきなりパチンと灯りが消えた。
えっ……。
そして、目の前に灯りの消えた次の間から入って来て、
襖を後ろ手にそっと閉める冠くんが現れる。
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