第16章  美佳という人

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「明後日は、お土産買いに行きましょうね」 それでも、あまりに楽しげに話す彼を、私は、思わずゆっくり見上げた。 それに気付いた彼が、私を見下ろしニッコリ笑う。 「冠くん、楽しそう」 「すごく楽しいです。ナッちゃんといられて、すごく幸せ」 フフッ……。 さっきまでの濃厚な時をつくる人とは思えないほど、 素直で無邪気に笑う彼に、やっぱりいつも通りに細く笑いが零れる。 ところが、嬉しそうに私を抱きしめた彼の胸が、なぜか小さく溜息を零した。 「冠くん?」 「うん……」 「どうしたの?」 再び見上げた私の目に、ちょっと切なげな面持ちの彼が映る。
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