第15章  紅葉の宿(つづき)

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「あ、あの冠く……」 しかし、おぼつかない私の言葉に重なるように、「ナッちゃん」と呼ばれる。 部屋の灯りは、足元の隅に置かれた小さな行燈調のものひとつ。 そして伸びてきた彼の手が、私の手をそっと取った。 「何もしない。ちょっとお喋りしよう?」 そう言って、床のほうへとゆっくり引いていく。 彼は、一枚の掛布団を静かに退けると、 そこで私を自分の膝の間に抱え込んだ。 「ナッちゃん、すごく綺麗」 背中からすっぽりと包まれ、呟くように言った彼の唇が 私の耳の裏側を掠めるように這う。 「あっ……、冠くん、何もしないって……」 「ごめん」 彼が、クスッと小さく笑って私をギュッと抱きしめた。
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