小休止

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くるりくるりと紡ぐ四季。 春は桜の花びらを、 悲しき涙で濡らせれば、 夏の火花に顔綻ばせ、 秋は菊花の朝露に、 在りし想いを胸馳せる。 それでも心は晒せない。 自分で鍵をかけた自鳴琴。 一緒にかがった手鞠歌。 巻いて包んで 奥に隠した記憶の糸。 気づけば解れ、身に絡み、 前にも先にも進めない。 もつれ絡んだその糸を、 手繰った先には誰がいる? 籠女籠女や囲いの中。 苦界に幸などありませうか。 全ては泡沫、一夜の夢。 後ろの正面だあれ? 問われて振り向くことなかれ。 籠女の恋に、幸などない。 あるのは苦界の責め苦のみ。 糸繰り車はまた回る。 曲がった路地(ろおじ)の暗がりに、 ぽつんと灯る、雪洞の煌めき。 懐かし愛しと 御宿の暖簾を潜ってみれば、 愛した娘の衣を纏った 見慣れた女の艶姿。 くるくる回る、 運命糸(さだめいと) 何故と佇む男をおいて、 女の口がゆるりと動く。 全ての顛末、かたりませう。  
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