幸せになりたかった女

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「ええ。最近、寝不足で。中々寝られないものですから」 「そうなんですか。それならいいんですが……あ! 僕、今、休憩時間なんですよ。少し付き合ってください」  有加里の言葉に少し心配そうな顔をした彼は、彼女を元気付けようと、お茶に誘った。  院内の喫茶店に入ると、迷うことなく喫煙席へと向かう成瀬は、「あっ」と声を出して振り返った。 「煙草吸っても大丈夫ですか?」  成瀬は有加里にシガレットケースを見せる。  両親も健も非喫煙者で、彼女自身も吸わないが、周りの人間が吸っていても、気になるタイプではなかったので微笑みながら頷いた。  目の前でシガレットケースから茶色の煙草を一本取り出し、火をつける成瀬を見て、有加里は思ったことをそのまま口に出していた。 「葉巻?」  彼女の言葉を受けて、ゆっくりと味わうように煙を肺へと吸い込んでいた彼は、静かに頷いた。
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