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「うまくいったね」
「ああ」
「まさか、あの時。煙草を受け取らないとは思わなかったけどね。あれで予定が大幅に狂っちゃったよ。なんせ、寝タバコの不始末が使えなくなっちゃったからね」
「そうだな」
マンションの一室で抱き合う2つの影。
彼らは愉快そうに喉元でクックックッと笑っている。
「でも、流石は成瀬。まさか、有加里の眼鏡に着目するとはな」
「あはは。でも、真実は眼鏡の収斂による火事じゃないけどね。あくまでも、出火原因を眼鏡に仕向けただけ」
あの日。
成瀬は出張場所からの直帰を許されていた。
彼はそのまま手土産のワインを片手に高梨家を訪れた。
彼女の愚痴を聞くために。
最初の頃は昼間の飲酒を拒んでいた彼女ではあるが、健が帰宅するのは遅い。
夕方前にお開きにすればバレないという成瀬の甘い誘惑に勝てずに、健が居ない日に、彼と自宅でこっそり昼飲みをするようになった。
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