幸せになりたかった女

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「お待たせしてしまってすみません。どうぞ中へお入りください」 「朝の忙しい時間に申し訳ありません。あの良かったら、これ……」  差し出された箱を見ると、この地域では有名な洋菓子店のもの。 「まぁ。そんな……お気遣いなさらなくても」 「とんでもない。本当につまらないもので恐縮です」  見た目だけでなく、彼の礼儀正しい言動を見て、有加里は好感を持った。  応接室へと案内しようとしたところで、タイミングよく健が書斎から出て来た。 「早かったじゃないか」 「ええ。せっかくの休日ですし、面倒なことは早く終わらせたいですから」 「おいおい。仕事を面倒なこととか言うのは、お前くらいだぞ」 「あはは。すみません」  人懐っこい笑顔。  面倒臭いという言葉も彼だからこそ、許せてしまう不思議な魅力がある。 「あ、そういえば……」  突然、健と有加里の顔を交互に見比べだした成瀬に、二人は目を丸くする。 「やっぱり! 高梨ご夫妻は本当にラブラブなんですねぇ」  悪戯っ子のような笑みを浮かべる成瀬の言葉に、健と有加里は互いに顔を見合わせた。
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