幸せになりたかった女

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「お前、何気に失礼だな。話しかけるなオーラなんて俺は出してはいないぞ? それにだな、俺達の仕事はいつ飯が食えるか分からないだろ? 弁当の方が何かと……」 「はいはい。惚気はそこまでにしてくださいよ。独身の僕には嫉妬しか出来ませんから。ねー、奥さん」  健と成瀬のやり取りから、有加里は、二人は相当仲良しなのだと思った。  その証拠に、医師はお互いを「先生」と呼び合うが、彼は一瞬、学生時代にでも戻ったかのように「先輩」と言いそうになっていた。  よく言えば無邪気。  悪く言えば学生気分の抜けきらない彼に対し、有加里はつい吹き出してしまった。 「え? 何かおかしなこといいました?」  小首を傾げる成瀬は、有加里を見て何かに気が付いたような顔をした。  今度は逆に、「どうしました?」と有加里が首を傾げる。 「奥さん。目が大きいって言われません?」  彼の言っている意味が分からず、一瞬、ぽかんとしたものの、すぐに健が、「お前。旦那の目の前で嫁を口説くのはどうかと思うぞ?」と呆れたような声を出した。  そこで我に返った有加里は、漸く彼の言葉の意味を理解し、クスクスと笑った。
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