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プロローグ ~不愛想な貴族の青年~
昔のお話をしましょう。
あるところに無愛想な貴族の青年がいました。
その青年はたいへん真面目でしたが、不器用で人と接することを避けていました。
「私は高貴な人間なのだから、甘えなど許されない。常に威厳があるべきだ」
大きなお屋敷に住む青年は自室に篭って勉強、勉強、勉強の毎日でした。
或る、空が青くてとても気持ちよく晴れた日、彼がふと窓から庭に目を向けると一人の見たことのない少女がいました。
どうやら彼女は花の手入れをしているようで、鋏を片手に仕事をこなしています。
後に彼女も青年に気がつき、青年のいる部屋を見上げると微笑んだのです。
お互いに目が合った瞬間、青年は彼女に恋をしてしまいました。
彼女は新しく雇われたメイドでした。
勉強ばかりだった青年は初めて人と、彼女と親しくなりたいと不器用ながらも思います。
おはよう、こんにちは、こんばんは、おやすみなさい。
毎日会っては必ず挨拶をし、1日を終えます。
それでも不器用で、なかなか彼女とゆっくり話すことができません。
ある日、彼女は自分の友達の話をしました。画家の男だと言い、最近知り合ったらしいのです。
最初は断ったらしいのですが、彼女はその画家に絵のモデルを頼まれ、近々、自分を描いてもらうと言っています。
楽しそうに話す彼女を見て、彼は、とても嫉妬しました。その画家の男に。
それからいくつかの月日が経った頃。
彼女は死を、青年の屋敷で迎えました。
それは何故でしょう?
青年は嘆き、動かない彼女の側には画家がいました。彼は虚ろな目でこう言います。
「彼女を愛したいのなら、また愛せばいい」
画家の手が青年の肩へ伸びる。すると、彼の世界は壊れ、崩れていきました。
なにがあるのかわからない真っ暗な深淵の床。そこに身を押された青年は画家の腕をそのまま力強く握りしめ、
堕ちて逝きました。
「お前だけは許さない……!!必ず※※やる!!」
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