サンクチュアリ

10/29
前へ
/30ページ
次へ
こうして理美と日本語で話しながら囲む 食卓は賢一を安堵させた。いくら会話に 困らなくても外国語での食事は緊張する。 パリにいた頃は例え箸で和食でも形容 し難い違和感があった。 片付けようと立ち上がった理美を賢一は 制した。 「ここは俺がやっておくから、風呂入って きたら? 忙しかったろ?」 理美は頷いた。 「有り難く頂戴します。」 聞こえてくるシャワーの音にあの夏が フラッシュバックした。濡れた理美の 身体をバスタオルに包(くる)んでベッド ルームに連れて行った、蒸し暑い夏の 夕暮れ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加