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今日は道場での稽古だと知っているから、
理美は食事を用意し風呂もすぐ入れる
ように湯を張っているだろう。しかし、
もう二十二時近い。彼女の夫は妻が遅く
まで外出していても気にしないのか、それ
とも気にすることがなくなった関係なのか、
賢一は敢えて触れずにいるだけに掴み
どころがない。
「ただいま。」
玄関で呟く。リビングから理美の声が
返って来た。
「お帰りなさい。」
「来てたのか。」
「うん。」
「こんなに遅くまでいて大丈夫なのか。」
本当はこんな無粋なことは訊きたくない。
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