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「平気。家に帰っても誰もいないから。」
「え?」
賢一は思わず聞き返した。
「誰もいないって…。」
「離婚した。」
「離婚?」
「そう。鎌倉の家を出て逗子に
引っ越した。」
「いつ?」
「一昨日。」
「離婚の話なんて出てなかっただろ?」
「向こうが一人になりたいって言い出した
から同意したの。」
彼女の夫はスキー選手だった。知り合った
時には二人とも既に引退していたが、
アスリート同士話が合い、それなら一緒に
住もうと早々に結婚を決めた。小さなすれ
違いや不満はあったものの穏やかな日々
だった。
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