1280人が本棚に入れています
本棚に追加
王子のせいではないことぐらい小さかった俺にもわかっていたが、だからといって王子とカッキーの仲を取り持ってやろうと王子に協力をする気にもなれなかった。
一番カッキーと仲が良かった俺がそんな調子だったので、常に他の園児に囲まれていた王子は滅多にカッキーと接するチャンスはなかった上に、当の本人にも避けられているとあっては、話すことさえ至難の業(わざ)だった。
――しかし、そんなヒロ王子もついに動く日がきた。
王子が転園することになったのだ。
どうやら外国に行くらしい。
女の子たちは「やっぱり本物の王子様だったんだ!」と興奮しつつ泣いていた。どうやら彼女たちの中では「外国=王子」という図式が成り立っているらしい。
それにしても、女って器用だ。「すごいすごい」と喜びつつ、「行っちゃヤダ」と嘆くんだから。
登園最後の日。
夕暮れの園庭で、文字通り後のない王子はカッキーに捨て身(?)のアタックを仕掛けた。
俺とカッキーはその当時、園の隅に置かれた円筒の土管を自分たちの秘密基地にしていた。
他にも数人の仲間(もちろん男)がおり、そいつらと土管の中に面白い形の石だとか、蝉の抜け殻だとか、家からこっそり持ってきたオモチャだとかを集め、中でぎゅうぎゅうになりながら遊ぶのがマイブームだったのだ。
俺たちは、正直、王子が転園しようが外国に行こうがたとえ本物の王子だろうがどうでもよく、いつものようにそこで遊んでいた。
「ぼくも仲間にいれて…!」
いきなりやってきてそんなことを言い出したヒロ王子に、俺もそうだが他の連中も驚いた。
「えー、やだー」
誰かが正直すぎる反応をした。
意地悪ではなく、園児というのはとにかく自分の欲求に正直なものなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!