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俺の幼馴染、千羽(ちば)翔(かける)――旧姓、佐藤(さとう)翔は「平凡」をこよなく愛する男である。
とにかく自分が目立つことが嫌いなだけでなく、目立つ人間にも寄り付かず寄り付かせず、とにかく地味に平穏に日々を送ることに何よりも重きを置いていた。
もし俺がイケメンだったり特別な才能で脚光をあびるような人間だったら、きっとあいつは俺と友達になっていなかっただろう。
……その割には、時々うっかり注目を集める行動をしちゃって「やっちまった…!」とガックリしていたりするのが、あの幼馴染の残念なところでもあり可愛げのある部分でもあると思う。
俺と幼馴染が仲良くなったきっかけからして、その「やっちまった…!」が原因だった。
つまり俺はカッキーに「やられちまった…!」立場であった。
……「やったやられた」なんて口にすると俺の彼女がいかにも食いついてきそうな話だが、あれは残念ながらそんな桃色模様な甘い出会いではまったくなかった。
俺とカッキーを引き合わせたのは、俺たちが通う園で行われた演劇だった。
俺はその劇で「魔王」役に抜擢された。
――つまり悪役。
「やられ」役である。
誰もやりたがらなかったのでくじ引きで決められた。俺は昔からくじ運が悪い。
アイスの当たりもめったに…というかほとんど当たったことがないくらいのくじ運の悪さだ。
ちなみにカッキーはアホほどくじ運がいい。俺はいつもあいつが当たったアイスの「当たりくじ」をもらっていた。
くじ運の良い友達を持つと得だ。……「いいなぁいいなぁ」と横でしつこくぼやいたせかもしれないけど。
カッキーは基本的に友達を大切にするイイ奴だ。決して、当たりくじ(ワイロ)をもらったから言ってんじゃないからな。
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