幼馴染はヒーロー

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 劇のクライマックスで、「魔王」を倒すはずの「王子」を押しのけて後ろから飛び出してきた「家来その3」に、俺は脳天を段ボール製の剣で思い切りぶっ叩かれて昏倒した。  それはまさに目にも止まらぬ電光石火の動きで、俺は避けるどころか身動きひとつとれなかった。  ――殺される、と思った。  あの当時は、体が竦み上がった理由がわからなかったが、今ならなんとなくわかる気がする。俺はたぶん殺気に当てられたのだと。  暗くて冷ややかで重い、……形容しがたい気迫にのまれ、硬直してたところを頭に一撃食らって失神した俺は、舞台を途中退場したのでその後の騒動については目にしていない。  後日、聞いたところによるとカッキーはカッキーで呆然自失しており、やはり役をこなすどころではなく、母に連れられて一先ず家に帰されたということだった。  かかりつけの病院でとりあえず大丈夫だろうという診断をもらい、家に帰った俺を訪ねてカッキーと母親が見舞いと謝罪に来た。俺と母親は彼らを玄関で出迎えた。 「このたびは、本当にうちの子がすみませんでした」 「……ごめんなさい」  カッキーは母親と共に、深々と頭を下げて俺達に謝った。 「それで息子さんの具合は……」  母親同士で診察の結果とかなにやら難しい話をごちゃごちゃと交わしている横で、俺はじっとカッキーを観察していた。  ……カッキーは俺に謝ったものの、ずっとうつろな目をしてて…なんだか、俺は子供心にとても不安になった。  目線はこっちを向いているのに、その瞳に俺は映っておらず、どこか遠い別の場所を見ているように感じた。  俺はそれにひどく焦りを覚え、とにかく「大丈夫」って言わなきゃと思ったのだ。
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