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「いたくない」
「こんなのへっちゃらだ」
「へーきへーき」
「いしあたまだし」
俺はそんな言葉をたくさんたくさん口にした。馬鹿みたいに元気アピールをした。
うつろだった瞳が俺の存在をはっきりと認識するまで続け、調子に乗って廊下をでんぐり返りまでしてみせた。ら、……母親に頭を叩(はた)かれ涙目になった。
かーちゃんそこ剣でバコンとやられたとこだから…! でっかいタンコブできてっから!
うちのかーちゃんはけっこう容赦ない性格だ。口より手が早い。
「なにやってんのバカなの!?」
「いてえいてえって!」
「ほんとにあんたって子は…!」
「ギャクタイハンタイ!」
「人聞きの悪いこというんじゃないよこのバカ息子!」
……いや、うちのかーちゃんは手だけじゃなく口も相当なもんだった。
カッキーは目をまん丸にして、ぎゃあぎゃあ言い合う俺たち親子を見ていた。
びっくり眼のカッキーはさっきまでと違い、ふつうに年相応な子供に見えて俺はとてもほっとしたのである。
そんなことがあって、俺はカッキーと親しくなった。
ちなみに発表会後、園でカッキーはヒロ王子の出番を奪ったとかで、女子のやり玉にあげられていた。その一方で、被害者(?)の俺に同情する女子は一人もいなかった。げせぬ。一人くらい心優しい女子がいないものか。
それどころか、「なんで魔王のくせに家来なんかにやられるんだ」とでっかいタンコブをこしらえて卒倒した俺にまで八つ当たりが飛び火してくる始末だった。まったくもって女って理不尽だ。
ぷんすか怒る俺と違い、カッキーは女子の批判を「はいはい」「うんうん」「ごめんごめん」とすべて適当にあしらっていた。
……その様がなんだかやけに手慣れていて、幼いながらに「こいつよくわからんがすげえ」とちょっと尊敬したりした。
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