4.黒猫の憂鬱

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「僕と黒猫さんはお友達だよ?」  友達になった記憶はない。  と心でツッコミつつ、今の状況的に林が話してくれた方がありがたいのも事実なので黙って先を聞くことにした。  なぜかむっとした葵の視線が林に向けられ内心ほっとする。 「林くんに聞いてない」 「話してたの僕だよ?」 「そうだけど、楓に聞いてんの」 「黒猫さんは瀬上さんを心配してただけだよ。僕が変なちょっかい出してるんじゃないかって。ね?」 「え。何それ」 「ね?黒猫さん。だから僕はイチ同期として瀬上さんを大事に思ってるからそんなことしないよって話の途中だったわけ」  恋愛感情がないことは明白だが、それでも「大事に思っている」なんて表現をさらりとしてしまえる林。  この男、絶対タチ悪い。  だけどこういうところが林の良い所なのかもしれない。  私の事を「黒猫さん」だなんて呼んだり、冗談ばかり言いながらどこか人を喰ったような態度は人を腹立たせるには充分なのだが、ふとした瞬間に嘘ではない言葉を吐く。  嘘ではないなと、ちゃんとわかる。  葵の事を大事に想っていると言った。  本人の登場によって会話は途切れてしまい私が答えることはなかった。  しかし、ちゃんとわかった。  林のあの言葉に嘘はない。 「楓、ホントに?」  長い付き合いの、しかも絶対に私より林を理解してるであろう葵もそれを察しているのだろう。  いつもの冗談か真実かはわかるはずだ。
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