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別に認めたくなかったわけじゃない。
葵がいつからか私の中で特別だったのは事実で、大学時代から葵に恋人が出来る度に少し寂しい想いをしていたのも事実だ。
それでも、自分のものにしたいとか触れてみたいと思ったことはなかった。
しかしやはり、結婚となると衝撃が大きかったらしい。
葵には幸せでいてほしいと想う気持ちと、これで完全に悠貴くんのものになってしまうという強烈な寂しさの中で揺れて疲れていたのかもしれない。
自分でも、気が付かないうちに。
「……何です?」
横目で林を見たらすぐさまバレた。
「いや。私寂しかったのかって思って」
「自覚なしだったの?見てすぐわかったけど」
「……会社ではクールで通ってるんだけど私」
「クールビューティーね。瀬上さんもよく言われてたよ。最近はクールでもないよね」
「……悠貴くんと付き合うようになってから柔らかくなってんだよ」
「うん、みたいだね」
「よく知ってるね」
「瀬上さんもさ、黒猫さんの事大事にしてるよ」
「言われなくてもわかってる」
それは充分伝わっている。
葵以上に愛想のない私は昔から「可愛げがない」「つまらない」「お高くとまってる」と言われ慣れてきていた。
大学に入ったところで変化もないだろうと思っていた矢先に出逢ったのが、葵だった。
自分だって必要以上の愛想を振りまくタイプじゃないくせに、何かと私を心配してくるのは葵だけだった。
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