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クレアと出会う前、俺は賞金稼ぎまがいのことをしていた。
賞金首を狙うのは、決まって雨の降る夜。
――雨は、闇は、この血のように赤い髪を覆い隠してくれるから。
そして同時に、自分がどれだけ血にまみれた存在なのかを、見せつけてくる。
大きな息を吐き出し、雨と戯れるクレアから目を逸らす。
何もかもが俺とは違う少女。暗闇の中で生きてきたのに、どうしてそんなに眩しい存在でいられるのか。
「レイン」
「なんだ」
「雨が、やむよ」
「はぁ……?」
俺を振り返り、穏やかな笑みを浮かべたクレアは小さな手を差し出している。
訝しむ気持ちを露わに眉根を寄せた俺に構わずもう片方の手を差し伸べて「早く早く」と急かしてくる。
何をそんなに焦っているのか……呆れながらクレアへと歩み寄り手を掴む。
いつもはあたたかな手が雨に打たれ続けたせいで冷え切っている。
「帰ろう」と言われるのを察していたのか、俺が口を開いたと同時にクレアはぶんぶんとかぶりを振って握った手に力を込めた。
「もう少し、もう少しだけ。お願い」
「何をそんなに……」
「お願い」
きっ、と細められた胡桃色の瞳はいつもよりずっと強い意志を孕んでいる。
これは俺が決して拒めない眼だ。
そして、こうなったクレアは頑として譲らない。
さっきよりも大きな息を吐いて隣に立つ胡桃色の髪を見下ろす。
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