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まん丸な頭に、ちょこんとちいさなつむじ。
嫌がらせにぐりぐり押してやろうか……なんて事を画策していたらふと気付いた。
いつの間にか雨がやんでいる。
ぐるりと辺りを見渡せば、黒い雲の隙間から太陽が覗き、光のカーテンが空から伸びている。
素直に、綺麗だと思う。
けれどクレアの目当てはこれではないようで、俺の腕をぐいぐいと引いてきた。
「こっちこっち!」
「危ないぞ。落ち着け」
この小高い丘には柵も何もない。ひとつ足を踏み外せば市街地までまっさかさまだ。無事ではすまない。
その危険を考えていないわけではないだろうに、クレアはずんずんと丘の先へと進んでいく。
視界を遮っていた木々をかき分けていくと同時に、空に浮かんでいた黒雲も消えていき――
「ほらっレイン!」
振り返ったクレアが指差した先には、姿を現した青空。そこに、大きな弧を描いて伸びた七色の光が輝いていた。
「綺麗だね」
「……ああ」
ほう……と溜息交じりに零し、ちょうど真正面に位置した見事なまでに綺麗な半円から視線が逸らせない。
食い入るように空を見上げる俺の指に、クレアは自身のそれを絡めてきた。
きゅ、と強く握られたのと名前を呼ばれたのは同時で。返事をする代わりに細い指を握り返せば小さな笑い声が耳に届いた。
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