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今日のデザートはクレアの大好物である生クリームたっぷりのプリンだ。
夕食も済んだ今、クロウがその準備をしているだろう。好物さえ口にすれば、クレアはすぐさま上機嫌で頬を押さえて身を捩らせて笑うはず。
……単純なんだ。良くも、悪くも。
「おいひい!」
「良かったー。店で出しても問題なさそう?」
「うん! 超おいしい!」
「自信作だったからクレアちゃんに褒めて貰えて嬉しいぞ」
「あたしもクロウさんの自信作食べれて嬉しいぞ」
えへへーと顔を近づけて笑い合う2人を、どこか白けた気持ちで眺め、重い息を吐いた。
顔が近い。じゃれるな。絡むな。
じりじりと込み上げる不満を誤魔化すように目の前のコーヒーを一気に飲み干した。
すでにぬるくなっていたそれは苦みを伴って喉を滑り落ちていき、逆に咥内に渇きをもたらし不満が募る。
クレア達のはしゃぐ声と、店内の喧騒のせいで心がざわざわと落ち着かない。
ふと周りを見渡せば、店主のロッドをはじめとする常連客や従業員までもが俺を囲み顔を覗き込んでいた。
「……なんだよ」
にやにやといやらしく笑う顔には、「嫉妬?」と書かれているようでさらに苛立った。
わかりやすく息を吐き出し、一番近い奴の額を小突いて立ち上がり振り返らずに店を出た。
あいつらは人をからかうことに生きがいを見いだしている。だから、無視するに限る。
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