~ある雨の日のお話~

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 付き合いが悪いと、人は言う。  けれど、人と接することを拒んできたこの身は何をするにも戸惑いだらけで、何が正解なのかもわからない。  多くの人が集う場所で暮らすことも、拒絶してもずかずかと押し入ってくるような奴らへの対応も。  何度目かわからない溜息を吐き、ゆっくりとかぶりを振った。  親の、仲間の仇だけを追って独りきりで生きてきたせいで、たぶん俺は人として大事なものが欠けているのだろう。  あんな風に無駄に距離の近い奴らを見ていると居た堪れなくなってしまう。  誰が嫌いだとか、気が合わないとか。そういう感情じゃなく――ただ居づらい。  自分が異端であると、まざまざと見せつけられているようで。  どれだけ自分が血にまみれているのかと、思い知らされる。 「レーイン」 「……なんだ」  いつも何かに必死で周りを見る余裕などないクレアは、なぜか時々ひどく聡い。  俺がこうして一人ふらりとCuoreを出てもすぐに気付いて追いかけてきて――何も言わずに隣に立つ。  いつだってくだらないことでしつこく詰め寄ってくるくせに。  こういう時は、何も聞かずただ穏やかな笑みを浮かべている。  ……その空気が、心地良いだなんてどうかしている。  我がままで自分勝手に見えるくせに本当は誰よりも憶病で繊細で、俺よりもずっとずっと気遣いのできる子だ。  自分のことしか考えてなくて、いつだって余裕がないのは――俺だ。 .
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