0人が本棚に入れています
本棚に追加
「何で眼鏡外さないの?」
前の席の椅子の背もたれを抱えるようにして座った女子クラスメイトがそう問い掛けて来た。
僕が伊達眼鏡を掛けていることは、このクラスでは周知の事実である。
何度もずり落ちる眼鏡を直す僕に、見えるのだから外せばいいのにと思って聞いたのだろう。
不思議そうに此方を見る彼女を眺めながら僕は言う。
「だって、怖いじゃない」
僕の答えの意味が分からないのだろう彼女は、一度ゆっくりと瞬いて苦笑い。
「目、良いんだよね?」
「そうだね」
「眼鏡無しでもくっきり見えるんだよね?」
「そうだね」
「なのに怖い?」
更に混乱していますと顔に書かれている彼女はきっと、僕が視界がボヤけることで出てくる危険について怖がっていると思っているのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!