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「随分、レタス細かくちぎるんだね、ミチルは。」
その声と共に後ろからふわりと手が回される。
「ひゃっ。」
「なに、その声。一々、リアクションが良いね、君は。」
そう言いながら私の体に手を回したままレタスをちぎりだす高嶋さん。
背中に高嶋さんの体温を感じる。
高嶋さんの行動一つ一つにドキドキすると同時に他の女の人ともこういう事ーーーー
私の心の中の嫌な部分が込み上げてくる。
「ミチル?」
高嶋さんの優しい声が直ぐ耳のそばに聞こえる。
「どうかした?」
何でもない…って言えば良いのに上手く言葉に出せなくて。
見えもしない元カノの幻影に嫉妬しているって素直に打ち明ければいいのに……自分が随分と子供みたいに思えてーーー何も言えなくなる。
「顔を見せて。」
手に持っていたレタスをボウルに戻され、くるりと向きを変えられてしまう。
私の後ろにはシンク、目の前には高嶋さんの困り顔。
近すぎる距離に目が合わせられなくてつい下を向く。
「ごめんな?」
「えっ?」
高嶋さんからでた思わぬ言葉に顔を上げると
「ミチル、初めてなのにな。俺、浮かれちゃって昨夜はちょっと強引だったよな?」
「えっと……」
私の考えている事と別の事を言い出す高嶋さん。
「参ったなぁ。ほんと、ごめん。俺、自分から好きになったのとか初めてで、気持ちがめちゃ舞い上がっちゃって。何か俺、重いよね?色々と。」
目の前で申し訳無さそうにする高嶋さん。
「いえ、重いとか……そんな事ーー」
寧ろ、私の方が重い重い妄想で自分自身を苦しめているんですけど。
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