2017 蒙霧升降

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神谷神社を訪れたら、リナは狐たちの気配を察知するしぐさを見せていた。 「リナ。いえリュカ。久しぶり。」 「着物姿も新鮮だな、かのん。」 「あなたの男言葉もね。」 互いに笑い合ってから、リナが耳に口を寄せた。 「今、何かが横切らなかったか?」 今はリナの足下に座ってるよ。 「うーん。もう一声。」 目を見開いたリナがニヤリと笑った。 「今は見えない。でも、あきらめないからな。」 「ふふっ。誰に言ってるの?」 「今、横切った者たち。かのんに訊いたら意味ナイしな。」 そこで凛音が微笑んだ。 一瞬時が停まった感覚に喜びが沸き上がった。凛音は本気の恋に巡り逢えたのだろう。凛音とリナが手を繋いで光の方へと走る印象的な未来が、確かに視えたから。 リナではなくリュカ。 女性ではなく男性。 リナが男性として生きていくことが、弟子入りの条件だったという。男性用の袴を着て、化粧も物腰も女性的な言動も全て禁止にしたのだ。 断髪しないことを条件に神谷神社で過ごしていたリナが、徐々に変わっていったという。 【リナが調和の役割を果たしている。】 【リナが凛音に心を添い遂げておる。】 狐たちの真言が届いた。 凛音も神谷神社の後継者として気負い過ぎていたのが、リナを意識することで肩の力が抜けたようになったらしい。 狐たちはリナを弟子にすることで、凛音の成長を期待していた。 巫女の特質である神気を向上させるには自身で“何か”を掴み取るしかない。教科書に書いてあるわけでもないし、マニュアルがあるわけでもない。第六感を具現化するというチカラを得るには、自身で見つけるしかないのだ。 鵺との戦いが控えている。 会館と相対的な関係である神谷神社が破られると、決して無傷では済まない。肉体的な病や怪我とかではなく、鵺が神谷神社を媒体に意のままに操るための、鵺の拠点とされてしまう可能性もある。 沸き上がる神気をコントロールできるのは、神谷神社の巫女である凛音だけだ。 【よかったわ。緋近(ひこん)蒼遠(そおん)。】 黙礼した狐たちも微笑んでいた。
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