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祖父との勉強会を思い出しながら説明を続けた。
「わたしは相生、相剋、比和を司る麒麟と呼ばれし者。将来きりん芸術会館の主となる者。」
ちなみに相生とは木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ずることを相生といい、この関係は永遠の循環を示すもの。
また相剋とは木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝つということ。具体的に述べると、木は土から養分を、土は水を吸収する。水は火を消し、火は金属を溶かす。金属は木を切ることを示している。
また比和とは、木と木、火と火、土と土、金と金、水と水は、相乗効果でますます盛んになるということ。
話を終えたわたしが凛音を見つめる。驚いた表情のままフリーズしている凛音に囁いた。
「このことは秘密よ?凛音が他人へ話す度に“ますます悪くなる″比和となる。悪い方向へ導かないよう口を閉ざすことが必要なの。良い方向に行けば“さらに良し″の比和になるの。」
「おばあちゃんも話せなかったのは、畏れていたからなのね。」
先日安らかに永眠した姿ではなく、凛々しき巫女姿の祖母を懐かしんでいるのだろう。
「神谷神社は表、きりん芸術会館は裏よ。神谷神社が繁栄してこそ良い方向の比和になる。」
わたしは右手を差し出した。
「これからもよろしくね凛音。」
ギュッと握り返したのは凛音。
「もちろんよ。秘密は墓まで持っていくものよ、かのん。」
うら若き凛音の祖母を彷彿とさせる微笑みだった。
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