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自然公園の裏側にわたしが通う高校がある。
会館と高校の間に自然公園があるので、徒歩20分ほどの散歩コースを歩いているみたい。
外国語を学ぶ外国言語科、通称“外語”と、美術や音楽を学ぶ美術音楽科、通称“美音”がある。比較的自由な校風だと思う。
制服は無地のジャケットとチェックのプリーツスカート。外語は濃紺に赤色、美音は濃緑に青色の生地で、一見してネクタイやリボンの色で判明できるようになっていた。
「おはよ、かのん。」
自転車が真横に停まる。幼なじみの玉木謙一。長身で彫りが深い二重瞼のイケメンのはずが、愛想笑いを一切しないので冷酷王子と噂されているらしい。
小さな頃から側にいる幼なじみだ。
腐れ縁というより田舎なので、高校受験の際に上がる選択肢のひとつに挙がる学校でトクベツでもないし、他にも同じ中学出身の人はいる。
と、客観的に思ってみる。
タイミングが合えば謙一の自転車でふたり乗りして通学してるのは、単純に気が合うから。
「おはよ謙一。ありがとう。」
「おお。クラス替えだな。友達作れよな?」
「知り合い少ないからボッチでいいもん。」
「ばぁか。かのんも外語ならよかったのに。」
「美音がいいの。」
「はいはい。進学したくなったら編入できるらしいぞ?コッチ来たら?」
ごめん謙一。興味ナイ。
「編入する気ないよ。」
「ちぇっ。ソッコーかよ。」
自転車置き場で別れたのは謙一は外語で、わたしは美音だから。外語は教室が別館にある進学組で1クラスしかなく、美音は普通科に近くて3クラスある。
チラ見されたり、こそこそ噂話のネタにされるのもイヤで、普段は別々に過ごしていた。
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