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起きていると、そのあいだずっと、光が自殺したくなるのを待っているひかるを、そのわくわくしている顔を、見ていなければならないから。
「こんなに出しっぱなしにして。学校から帰ってきたら、ちゃんと片づけなさいよ」
お母さんは、ベッドの枕元や床の上に散らばったマンガのコミックスを、ぱたぱたとてきとうに積み重ねた。
「今はこのままでいいわ。片づけてたら、学校に遅れちゃうもの。そのかわり、晩ご飯までにきちんと片づけておかなかったら、このマンガ、全部捨てちゃうからね。ゲーム機も、テレビにつなぎっぱなしにしてたらいけないって、いつも言ってるじゃない!」
――そんなばかな!
ゆうべ、マンガなんか読んでいたおぼえはない。まして、ゲームなんて。
そう考え、光はようやく気がついた。
天井のほうを、ぱっと見上げる。
やはりそこには、きれいなロングヘアのひかるが、半透明の姿でふわふわ浮いていた。
「や。おはよ」
にっこり笑いながら、その顔はどこか眠たそうだ。
――ひかるっ!
どなろうとして、光はあわてて口をおさえた。
ちょっと不思議そうな顔をして、お母さんが光を見ている。
お母さんは、ひかるの存在にまったく気がついてない。
「お、お母さん! もう出てってよ! ぼく、着替えるから!」
「光?」
「ほら、早く! 急がないとほんとに遅刻しちゃうってば!」
光は、お母さんの背中を押すようにして、むりやり部屋の外へ追い出した。
ドアをしっかりと閉め、それから部屋の中へ向き直る。
「――ひかる!」
「なによ。目上の人間を呼び捨て!?」
「ひかるは人間じゃないだろ、幽霊じゃんか!」
いや、そんなことはどうでもいい。
「ゆうべ、ぼくのからだを勝手に使ったろ!?」
ひかるは、にらみつける光と目を合わせないよう、しらじらしく視線をそらした。
「ぼくが寝てるあいだ、ぼくのからだに入って、ゲームしたりマンガ読んだり、一晩中遊んでたんだろ!?」
「だってさあ、おもしろそうだったんだもん、そのマンガ」
今度は完全に開き直り、ひかるは言った。
「あんたが持ってるゲームも、あたし、やったことないやつばっかだったし。ねえ、そのゲームのさ、3面がどうしてもクリアできないのよ。あとでやり方、教えて?」
「か、勝手なことばっか、言うなよッ!!」
光は思わず大声を出した。
すると、
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