1 生きてる光と死んでるひかる

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 とっくみあい、格闘技ごっこをしている生徒、対戦ゲームに夢中の生徒――学校にゲーム機を持ってきてはいけません、と、先生からしつこく言われているのだが――、スマホでゲームをしている生徒もいる。防犯のため、ケータイやスマートフォンを持ち歩くことは禁止されていないのだ。    女子の中には、鏡をのぞきこんでメイクを直している子もいる。  校則が何十年も前に作られた古いものなので、「学校にお化粧をしてきてはいけません」という一文がないのだ。校則ができた当時の小学生は、誰もメイクなんかしていなかっただろうから。    メイクをして登校する子は、最初は2、3人だった。  だが、いつのまにか 「あの子がメイクしてかわいくなってるのに、あたしがすっぴんじゃはずかしい」  と、クラス中に伝染して、今ではクラスの女子の半数以上がなんらかのメイクをしている。すっぴんの子は、親がアタマが古くて許してくれないと、文句ばかり言っている。    みんなが数人ずつのグループになって、好き勝手にしゃべっているため、教室全体がうわぁ…ん、といううなり声につつまれているみたいだ。    だが、 「……おはよう」  光が教室のドアを開けた瞬間、そのうなりが、ぴたりと止んだ。    教室全体が、凍りついたみたいに静かになる。    クラスメイトたちの視線が、一斉に光へそそがれた。    ――こいつ、また来たよ。うぜぇー!  ――うっそぉ、信じらんない。まだ生きてる。  声にならない声が、光のからだじゅうに突き刺さった。  ――あーやだやだ。キモぉ! なんでこいつ、うちのクラスなわけ!?  ――さっさと不登校になれよ、ばぁか!!    そしてみんなは、また一斉に光から目をそらした。    光がのろのろと自分の席へ向かっても、誰も光に声をかけようとしない。  光なんてまるで目に入らない、存在していないかのように、無視する。    だが本当は、見ていないわけではないのだ。  光と視線が合わないよう、顔を伏せながら、ちらちらと光の様子を盗み見ている。  光が今、どんな顔をしているのか、たしかめようとしているのだ。    光がどんなに傷ついているか、つらそうな顔をしているか、みんな、それが見たくてたまらないのだ。    くすくすくす……と、低い笑い声が聞こえる。とうとう我慢できなくなったらしい。  
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