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が、仲のいい人どうしで班をつくっていいと相沢先生が言い出したため、光はどこの班にも入れなかった。
相沢先生も、光が一人、理科教室のすみに取り残されていることには気がついていたが、もうなにも言わなかった。
井上くんをどこかの班に入れてあげて、なんて言い出したら、クラスじゅうが大騒ぎになって、授業ができなくなるからだ。
6年B組38人全員が実験できなくなるより、光以外の37人が無事に実験をやりとげるほうが、ずっといい。
お昼、給食の時間になると、ふつうの生徒は
「今日のおかず、なんだったっけ? 自分の好きなやつだといいけど」
なんてことを、考える。
でも光の考えることは、
「今日は、ちゃんと給食食べられるかなあ」
だ。
給食にゴミを入れられる、給食のトレイをわざとひっくりかえされるなんて、しょっちゅうだ。
さいわい、給食センターから専用トラックで運ばれてくる給食は、クラスに配られるころにはわりあい冷めていて、頭からぶっかけられても、やけどすることはない。
「お、今日は酢豚かあ!」
大きななべをのぞきこみ、給食用のエプロンをかけた森本がうれしそうに言った。
「ほーら、井上くーん。サービスしてあげたぜえ?」
にやにや笑いながら、森本は給食トレイを光の目の前に突き出した。
お皿の上には、酢豚のにんじんとたまねぎだけがよりわけられ、山盛りになっていた。
ほかにはパンも牛乳もない。にんじんとたまねぎだけだ。
「おら、食えよ! 残すんじゃねえぞ!!」
「給食残すヤツは、昼休み居残りなー!」
どうしていいかわからない光のまわりを取り囲み、森本たちは大声ではやしたてた。
相沢先生は、自分の給食を食べ終えると、さっさと職員室へ逃げてしまっていた。
光が椅子から立ち上がろうとすると、
「てめえ、逃げんじゃねえよ!」
森本はどん!と、光の肩を乱暴にどつき、無理やり座らせる。
「違うよ……。スプーンもフォークもないし――」
「てめえに使わせるスプーンなんかねえよ! 手で食えよ、手で!!」
「おら、食えよ! 食えよ!!」
「くーえ、くーえ、くーえっ! くーえっ!!」
いつのまにか、クラスじゅうが手をたたき、声をそろえてはやしたてていた。
森本たちはますます興奮し、光の頭をつかんで、給食トレイに押しつけた。
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