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最初は森本とそのグループだけだったのが、あっという間にクラス全員がいじめに加わるようになった。
相沢先生には、それを止めることは無理だった。
光と仲の良かった友達でさえ、いっせいに光に背を向けた。
「ほかの先生たちも、みんな知ってる。でも、誰も止めないんだ」
「どうして!?」
「だってぼくたち、六年生だよ。あと4ヶ月ちょっとで卒業なんだ。うちのクラスでなにが起きてても、あと4ヶ月、だまって見ないふりをしていれば、ぼくたちは卒業して、自動的に明京小学校からいなくなるんだ。そうなりゃ、なんの問題もなくなるじゃないか」
「それであんた、自殺して、本当のことを世の中にうったえようとしたわけ?」
「ううん、違う」
光は力なく首を横にふった。
「自殺する時は、遺書なんか書くなって、森本におどされてるんだ」
「――なんだって!?」
「遺書に自分たちの名前なんか書き残したら、家に火ぃつけてやるって」
「ち、ちょっと……! あんた、そこまでされて、なんでだまってんの!? そんなの、立派な犯罪じゃない!! そいつの言うとおり、告発もなんにもしないで、ただだまって死ぬつもりだったの!?」
「だって、しょうがないじゃないか!」
光はどなった。
「ぼくにどうしろって言うんだよ! 1対37だよ! 先生も、誰もぼくを助けてくれない。それどころか、学校の先生はみんな、森本たちの味方なんだ! 森本の親にどなりこまれるのが怖いから!」
涙があふれる。
次から次にこぼれ落ちて、とまらない。
今までずっとかくしてきた気持ちが、一気に胸の奥からあふれ出してくる。
「ぼくだって、ほんとは死にたくない。死ぬのは怖いよ。でも、これからずっと、毎日毎日いじめられ続けるのは、もっと怖いんだ……っ!!」
「光――」
声もなく泣き続ける光に、ひかるがそっと声をかけた。
「光。死ぬ覚悟があるなら、一週間――ううん、三日でいい。あたしにからだを貸して」
「え……? ど、どういうこと、ひかる……」
「このままだまって死ぬなんて、あんたもくやしいでしょう?」
いつのまにかひかるが、天井から、光の目の前まで降りてきていた。
あいかわらず半透明だけれど、まっすぐに光を見つめている。
「どうせ死ぬなら、あいつらに一発くらい仕返ししてから、死にたいでしょ!?」
「う、うん。そりゃ、できるなら……」
ひかるはにやっと笑った。
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