1 生きてる光と死んでるひかる

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 一年生の時から使っている学習机にベッド、本棚に乱雑につっこんであるコミックス。  まちがいなく、自分の部屋だ。   「あれえ……。ぼく、いつの間に帰ってきたんだろ」  さっきまで、歩道橋の上にいたはずなのに。    光はベッドの上に起き上がった。  服もちゃんと着ているし、リュックも机の横に置いてある。おかしなところはなにひとつない。   「へ……へんだな。なんか、へんな夢でも見てたのかな、ぼく」  怖い夢だった。全然知らない女の人の幽霊が出てきて、その幽霊がまた、妙にリアルで――。 「夢じゃないわよ」  いきなり、天井のあたりから声が降ってきた。   「うわああっ!?」  思わず見上げた先には、あの女の幽霊が浮かんでいた。    血に染まり、ぐちゃぐちゃにつぶれた右半身もそのままだ。  その身体の向こうには、天井の様子が透けて見えている。   「うっ、うわ、うわっ、うわわわ……っ」  幽霊を指さしたまま、光はまともな言葉も出せなかった。   「なによ、失礼ね。あたしは化け物か。――て、ああ、このカッコじゃ、たしかにおバケだわね」  幽霊は、ささっと両手で自分の顔をなでた。    すると、あまりにも無惨だった右半分の傷がきれいになくなり、服にしみついた血の汚れも一瞬で消えてしまった。  サックスブルーのおしゃれなブラウスに黒のパンツルックがかっこいい。    そして両手を離すと、左半分と同じく、若くてうつくしい女性の顔がぱっとあらわれた。    黒いロングヘアにほっそりとした顔立ち。髪と同じ色の瞳と、きれいにルージュでいろどられた唇。    ……きれいなおねえさん。  光は思わず、その顔に見とれてしまった。  とはいうものの、その顔はやっぱり半分透けて、うしろの天井が見えていたのだが。   「だ、誰?」 「なによ、覚えてないの? あたしがあんたをここまで連れてきてやったんじゃない」 「連れてきたって……」  幽霊はふわふわと宙に浮かんだまま、かっこう良く足を組んだ。まるで見えない椅子に座っているみたいに。 「ぶっ倒れて動かないあんたのからだを、あたしがかわりに動かして、ここまで歩かせてきたの。家までの道順は、ちゃんとからだが覚えてるものだからね」 「ぼくのからだを動かしたって……お、おねぇ――おばさんが!?」 「だーれがオバサンだっ! あたしはまだ二十五だ!」 「二十五才……。やっぱ、おばさんじゃん」
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