1 生きてる光と死んでるひかる

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 表情だけで、こんなにも違って見えるなんて。   「ね、かんたんでしょ」  光が、いや、光のからだに入ったひかるが、言った。    その声もたしかに光のものだったが、しゃべり方は全然違う。    ひかるはとてもうれしそうだった。  両手をなでたり、大きくのびをしたり、座ったまま足をばたばたさせてみたり、からだの動きを確かめているようだ。   「そういやあたし、昔から一度、男の子になってみたかったんだあ。そうだ、せっかくだから、どっか遊びに行こうかな! あんた、いつもどこで、なにして遊んでんの?」  ひかるはベッドから立ち上がった。   「あ、でも、このカッコ、だっさいなあ! もうちょっとマシな服、ないの?」  そして、壁につくりつけになっている洋服たんすを開け、光の服をかたっぱしから引っぱり出す。   「ち、ちょっと……! ひとのからだで、勝手なことしないでよ!」  あわてる光を、ひかるはにやっと勝ち誇ったような笑いを浮かべて見上げた。 「あんたは幽霊なんだから、これはもう、あたしのからだよ。――あ、と、あたし、じゃないか。オレ、かな? オレ」  ひかるはでかけることはやめたようだが、今度は本棚に並んだマンガをいろいろ物色し始めた。散らかした服も片づけないままだ。   「あんたは望んだとおり幽霊になったんだから、もうここにとどまってる必要もないし。好きなとこに行っちゃっていいのよ」 「行くって、どこへ……」 「天国とか地獄とか、いろいろあるじゃん。ま、あたしもまだ行ったことないから、良くわかんないけどさ」 「い、いやだよ! 地獄なんて、行きたくない!」 「なによ。あんた、死にたかったんでしょ? 願いがかなったんだから、文句ないでしょ!」 「いやだいやだいやだ! ぼくのからだ、返せよ!!」  光は大声でわめいた。  からだがあったら、手足をふりまわしてめちゃくちゃにあばれるところだ。 「人のからだ、勝手に使うな! 返せよ!!」  空中に浮かんだ光は、そこからひかるに思いきりぶつかっていった。  ――あ、ぼく、今は幽霊だから、蹴ったり撲ったり、できないんだっけ!?  でも、勢いがついて、もう止まらない。    そのまま光の姿は、ひかるに重なった。    その瞬間、また、からだ中がしぼられるみたいな、あの感じが光を襲った。   「う、うわっ! うわあっ!?」  おなかの奥から一気に吐き気がこみあげてくる。  
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