1 生きてる光と死んでるひかる

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 それを、どうにか押し殺そうとした時。   「あ……!」  光のからだは、もとどおりになっていた。    両手をさする。それからほほ、あご、髪の毛もひっぱってみる。ちょっと痛い。  ちゃんとからだがある。   「良かったあ……」  光は大きくため息をついた。   「あーあ、やっぱりだめか」  ふたたび半透明の幽霊になったひかるも、がっかりしたようにため息をついた。   「もともとのからだの持ち主であるあんたが、そうやってからだから離れたくないってがんばってると、あたしもからだの中に入れないのよね。さっきみたいに、あんたが気絶してるとか寝てるとかしてないと、すぐに追い出されちゃうの」  ひかるはまた、空中にこしかけるように、かっこよく足を組んだ。   「実は、あんたのほかにも二、三人、ためしてみたんだけど、全然だめだったの。からだの中に入るどころか、家の中までくっついてくこともできなくて。その人の後ろから玄関入ろうとしたら、ドアを通り抜けられなかったの。閉じたドアにどかん!て、顔からぶつかっちゃってさ、まるでテレビのコントみたいだった」  あはは、と、ひかるは気楽そうに笑った。   「じゃあ、なんでぼくだけ……」 「やっぱ、アレじゃない? あんたが死にたがってたから」  にやりとしたその表情は、やっぱりかっこいいや、と光は思った。   「ねえ。あんた、なんで死にたいの?」  光はうつむいた。  黙り込み、答えない。ひかるを見ようともしない。   「ま、言いたくなきゃ、言わなくてもいいけどね」  ひかるも、たいして興味もなさそうに言った。    さーて、どうしよっかなあなんて一人言をつぶやきながら、ひかるはそこにふわふわ浮いたままだった。   「な……、なに、してんの?」 「ああ、気にしなくていいよ。無視してくれてかまわないから」 「無視できるわけないだろ! あんた、ぼくにとりつくのはあきらめたんだろ!? だったら、さっさと別の人を探しに行けよ。なんで、いつまでもぼくの部屋にいるのさ!?」 「あんたがもう一度死にたくなるのを、待ってんの」  ひかるは、平然と言った。   「え……!?」 「だってあんた、理想的なんだもの。友達も少ないみたいだし、いっしょに暮らしてる家族はお母さん一人きりでしょ?」 「ど、どうしてそんなこと、知ってんだよ!?」
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