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第19章 モ ズ(つづき)
それからゆっくりと立ち上がり、私に歩み寄ってくる。
「お久しぶり」
私よりも年下とは思えない妖艶さで、美佳という人は赤い口元を綻ばせる。
「今日は、お買い物かしら」
そして、マロングラッセの入った紙袋に落とした視線を
這い上がるように私の目に合わせると、
「もう、せっかくチャンスあげたのに。
冠汰のこと、あんまり興味ないみたいね」
そう言った彼女は、そっと私の耳元に口を寄せた。
「だから、返してもらうことにしたわ、彼」
囁くように細い声で言って、私をじっと見つめる。
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