第19章  モ ズ(つづき)

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泣きだした彼女と肩で息をする僕に、 通りかかる人々が、何事かという目を向けてくる。 「ナッちゃん、こっち」 僕は、彼女の手を引き表通りから脇道へと入り、 街路樹の陰に彼女を連れて行った。 「ごめんなさい、驚かして。 でも、これから入院したっていう社長……、 彼女のお父さんのお見舞いに行くところだったんです」 そして、俯き加減で泣いている彼女の肩に手をかけて 彼女を覗き込んで続ける。 「それと、彼女と一緒だったのは、病院に案内するって言われたから。 それ以外の何物でもないです。連絡先だって教えてなかったし。 でも、僕の元先輩から聞いたって……」 全てが真実で、一言一句、嘘はない。 それでも僕は、祈るような気持ちで彼女が信じてくれるよう必死だった。
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