31人が本棚に入れています
本棚に追加
だから、
「ナッちゃん、僕……」
今日は、お見舞いには行かない。
そう言いかけた時、涙を収めた彼女が顔を上げた。
「冠くん、ごめん。私、ちょっと驚いただけ」
「でも……」
言いかける僕に、彼女は、赤い目をしたまま微笑んでくる。
「大丈夫。ちょっと色んな事がフラッシュバックして、
パニックになっちゃっただけ。ちゃんと、冠くん信じてるから」
だから、行って?
そう言ってくる彼女に、僕はかぶりを振った。
「こんなナッちゃん、一人で置いて行けない」
しかし、今度は彼女がかぶりを振った。
「お世話になった方なんでしょ? ちゃんと行かなきゃ。
行って、立派になった冠くん見せて、安心させてあげて」
最初のコメントを投稿しよう!