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 刃のないサーベルが命を奪うことはないけど、競技会は毎年かなりの重傷者を出している。まあ重傷を負うって事は防御の魔法が下手だって証明してるようなものだから、自信がないヤツは出ない方が無難、参加は任意なんだしね。それでも男の子って戦うことに夢中になるんだからホント、馬鹿みたい。  あたしがシロンを応援してるのは、戦ってる相手が大嫌いなライハルトだから。ライハルトは『十三賢者』の一族だからって、エリート風を吹かせてる鼻持ちならないヤツ。『ひろいっ子』のあたしやシロンに風あたりが強くて、蔑むようなことばかり言うのよね。落ちこぼれのあたしに比べ、シロンは成績優秀だ。学園入学後に全員が二人一組のチームになるんだけど、あたしのパートナーになってしまってきっと後悔してるだろうなぁ。でも賢者様が決めることだから、逆らうことは許されない。    ゆったりと結んだ漆黒の長い髪をたゆたわせ、シロンは銀鱗の魚影が水面に踊るがごとく優美にサーベルを操る。力任せで振り回すライハルトが、呆れるくらい格好悪く見えて笑っちゃいそう。でも十九歳のライハルトに十五歳のシロンじゃあ、やっぱり分が悪い。汗で額に貼り付いた髪、苦しそうに結んだ唇。それでも諦めずに、ライハルトの突きを払い、攻撃を押し返そうと前に踏み出す。サーベルが絡み合い、柄で競り合う。睨み合うライハルトとシロン。力任せにのし掛かられ、シロンの眉間にライハルトのサーベルが迫る。  もうだめっ! あたしは観ていられなくなって、つい立ち上がった。ところが、次の瞬間目を疑う。シロンがライハルトを弾き飛ばしたからだ。 「よしっ!」  頭上に拳を突き上げたあたしを、他のクラスメイトが白い目で見たけどかまうもんか。  気勢をそがれたライハルトは、攻撃に隙が出来た。機を逃さずシロンの繰り出すサーベルが勢いを増す。形勢逆転! 勝てそうな予感がしてきたぞっ。 「ふうっ……ライハルト様ったら、手加減なさっては相手が増長いたします」  むっ、後ろから聞こえた甘ったるくて癪に障る声はクラリッサね。嘘ばっかり、手加減してるどころか今のライハルトは、シロンの攻撃をかわすのに必死じゃない。
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