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「はあぁ……男の子の考えてる事って、わけわかんないっ!」
暖炉の薪がはぜる音を聞きながら、あたしはぼんやりと窓の外を見た。暖かなカントリー調のリビング。手作りのキルトカバーが掛かったこのソファーが、あたしの一番のお気に入り。とっても気分が落ち着くのよね。
「そりゃぁサイちゃんは、まだまだ男性経験が足らないもの」
ティーセットのトレーを手に、ママ・グレンダがリビングに入ってきた。
「なっ……男性経験って何よっ」
「それにしても、言い訳は見苦しいとはシロン君らしい言葉ねぇ」
ママ・グレンダは、ふくよかで可愛らしい手を口元に当てコロコロと笑う。
全寮制の男子学生と違い、女子学生は個人の家庭に下宿することになっている。もともと賢者候補生は男子のみに与えられる権利で、女子はせいぜい魔法使い止まりだったらしい。だから寮も男子寮しかなく、絶対数の少ない女子は下宿先をあてがわれるのだ。
二十歳になるまでに『十三賢者』誰かの弟子になれなかった候補生は、この世界で他の仕事に就くことになる。それは商人や農民、芸人やら細工師だったりと、人間界となんら変わらない。あたしが下宿している家の奥さん『ママ・グレンダ』は、植民地時代のアメリカから拾われて候補生になったと聞いている。だけど二十歳になる前に恋人と結婚し、下宿屋をすることに決めたそうだ。悲しいことにご主人は、人間界で大きな戦争があったときに手伝いに招集され戻らなかったそうだけど……。
ママ・グレンダが入れてくれたハーブティを飲み、一緒に出してくれたケーキを頬張る。
「うん、これ美味しい!」
ドライフルーツがたっぷり入った、少し堅めのパウンドケーキ。一センチくらいにカットしてあるそれは、周りが砂糖でコーティングされていた。
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