第四章 絶対に助ける

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「ねえ、なんの音?」 美奈はハサミを握ろうとした手を止め、不気味そうに窓を見た。 さっきから窓枠がガタガタと大きな音を立て揺れている。 それでも風が強くなってきたのだと自分を納得させ、憎らしい麻衣に目線を戻した。 改めてハサミに力を込めようとしたその時。 激しく窓の表面を叩く音が鳴り響いた。 何度も、何度もバンバン、バンバンと。 美奈と麻衣の左右の腕を掴んでいた女子生徒と三人で顔を見合わせ、 「誰もいないよね…?でもこれ、風じゃないよね…?なに?気持ち悪い…」 得も知れぬ不気味さに、麻衣の両側から腕を掴む二人の手は緩み、美奈はハサミを麻衣の髪から下げた。 その時、 「きゃああああああ!なによ、これ!」 スマホで麻衣のリンチ動画を撮っていた女子生徒が、見開いた目で画面を凝視している。 「何?何か映ったの?!」 四人は麻衣そっちのけで顔を突き合わせ、窓に向けた画面を見て悲鳴を上げた。 そこに映るのは、人の形をした真っ黒い靄(もや)の塊が、目と口と思わしき部分だけを赤く光らせ、両手を上げて激しく窓を叩いているものだった。 風の音だと思っていた唸りも良く聞けば「マイ…マイヲ、ハナセェェェ…」と聞こえる。 「こわい!なにこれ!助けて!ごめんなさい!!」 泣きながらお互いを突き飛ばし、這うように逃げたした四人を唖然と見送り一人になった麻衣は、恐る恐る窓に近づいた。  「ママ?ママなの?」 麻衣の問いかけに音がやんだ。 麻衣は慌てて開錠し窓を開けた。 そこには指先を血に染め、泣きじゃくる母、美恵子が立っていた。
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