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「ぶつかる!!」
そう叫んで目が覚めた時、美恵子はベッドに横たわっていた。
__ここはどこ…?家じゃ…なさそうだけど…
美恵子は起き上がりここがどこなのか確認しようとした。が、体がまるで鉛のように重くて動けない。
美恵子は起き上がることを諦め、なんとか首だけを動かし周りを見た。
白い壁、白いカーテン、モニター、まぶしすぎる天井の蛍光灯。
それからうっすらと消毒液の匂いがする。
__ここは…病院?ああ、そうか。私は高いところから落ちて病院に運ばれたのね…
と、美恵子が納得しかけたその時、
「看護師さん!美恵子が!妻が目を覚ましました!誰かぁ!先生!」
__あなたなの?そんなに大声出さないで…。
病院の方もお忙しいのよ…?それに他の患者さんに迷惑だわ…
夫の非常識な程の大声に美恵子は眉を寄せた。
その直後まぶしかった蛍光灯が美恵子を覗き込むたくさんの顔によって遮られた。
__え?なんでこんなに大勢いるの?
夫に、お父さんにお母さん…。やだ、お義父さんとお義母さんまでいるよ。この二人苦手なんだよなぁ。それにしてもみんな泣いてる。大げさだなぁ。そういえば麻衣…麻衣は?麻衣の姿が見えない。
「ママ!」
病室のドアが乱暴に開けられ、学校から走り続けて汗びっしょりになった麻衣は、その汗を拭う事もせず美恵子のそばに寄った。
そして、美恵子が目を開き生きている事を確認すると、ベッドに突っ伏してわんわんと泣いた。
続けて小太りの女医が病室に入ってきた。
泣きじゃくる麻衣と目を覚ました美恵子を交互に見て、
「お母さんと同じ泣き方するのね、麻衣ちゃんは」
と、人の良さそうな笑顔で言った。
それは田中だった。
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