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「そんな、危険な事を…」
「私には美恵子さんを無事に連れ戻して覚醒させるって責任があったから必死だったのよ。それで美恵子さんの自宅周辺を探し回って、やっと見つけた時はほっとしたわ。美恵子さんはあの日、何かおかしいとは思わなかった?ちょっと考えればおかしい事だらけだったのよ?まずバス停。私達が話してる間に三本通過していったの覚えてる?それはバス停にいた私達が運転手さんには見えないから。それから学校で美恵子さんが職員室に行って先生を呼ぼうとした時も私止めたでしょ?それも同じ理由。美恵子さんが麻衣ちゃんを見つけたら、私から病院経由で学校に連絡しようと思ってたのにその必要はなかった。だって…麻衣ちゃんのピンチに生霊である美恵子さんがガラス窓を揺さぶり叩いたんだもの。美恵子さんの思いが実在するガラスに干渉したんだから…本当に驚いた」
田中に説明され、美恵子は驚く事ばかりだったが、再び麻衣に会わせてくれた事、こちらの世界に戻してくれた事に深く感謝した。
「田中さん、最後にもう一つわからない事があるの。学校で麻衣を探していた時、どうして遠く離れた麻衣の声が私に聞こえてきたの?そのおかげで麻衣を見つける事が出来たのだけど…」
「ああ、あれは私もよくわからない。ただ最初にいなくなった美恵子さんを探してた時、遠くからあなたの泣き声が聞こえてきたの。私はその泣き声を頼りにあなたを道で見つける事ができた。だから仮説をたてたの。もしかしたら肉体を離れ意識だけの存在になると、本当に聞きたい声や音が聞こえるんじゃないかってね。思った通り、あなたは見事に麻衣ちゃんの居場所を探し当て、こっちの世界に戻ってきた。さらに驚くべきは麻衣ちゃんが生霊となった美恵子さんの姿を認識し会話をした事よ。このデータはこれからあの装置を研究する上で大きく貢献するわ。ねえ、わかる?今回のこの結果は私達医療チームの功績じゃない、ほんの少し手伝っただけ。美恵子さんと麻衣ちゃんの絆が不可能を可能にかえたの。あなたたちは運命に勝ったのよ」
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