第六章 一年後

2/2
前へ
/25ページ
次へ
◆◆一年後◆◆   朝、階段を降りてくる足音に、美恵子努めて明るい声を掛けた。 「麻衣、いよいよ今日は受験ね。緊張しなくていいからね。それからうまくいかなくても落ち込まなくていいわ。リラックス、リラックスよ」 予想通り、麻衣以上にガチガチに緊張している美恵子を横目に、冷蔵庫から牛乳を取り出しマグカップにそそぎ一気に飲み干すと、慌ただしく玄関へと向かう。 「ちょっと麻衣、朝ご飯は?何も食べないとおなかすくわよ。テスト中おなか鳴ったら恥ずかしいんだから。シーンとしてる中、グルグルーなんてねぇ」 自分で言って自分で笑いながら麻衣の後を追う。 「ごはん本当に食べないの?だったらバナナを持っていきなさい…」 いい加減うんざりした麻衣は振り返り、 「試験会場でバナナなんか食べる訳ないでしょ!そんなものいらない。おなかすいたら途中でコンビニ寄るから大丈夫!じゃあね、行ってきます!」 元気な声を響かせて麻衣はドアの向こうへと駆けて行った。 了
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加